6:萌え



「たまには、発想を転換して男女の仮装を逆転する、というのはどうでしょう?」



俺はたまに、いやほとんどの場合こいつの言っていることが理解不能だ。
学術的観点からみて純粋に難解だと感じることもあるのだが、
大体の場合はこいつの感性に疑問を抱く。

何をどう逆転させるって?

「ですから、例えばキョン君がメイドになってみたり、朝比奈さんが学ランになる、とか」



朝比奈さんの学ランについては譲歩してやらんこともない。
普段のメイドやらウエイトレスやら白衣やらがこの上なく似合っていることは
言わずもがなだが、そういうストイックな格好ってやつも
露出がないことで余計に扇情的な図式を編み出す場合があるからな。
朝比奈さんならギャルソンだのつなぎだのをお召しになってもさぞ麗しいことだろう。
美人、衣装を選ばず、ってな。





さて、それはいいとして問題は前者だ。
俺の空耳だと思いたい発言だが、第一そんなゲテモノまがいの仮装をして、喜ぶ奴がどこにいる。

「ここに居るじゃないですか。他ならぬ僕の希望なのですが、ダメ……ですか」
そんな顔をしたからって俺が靡くと思うなよ。
そこいらの女子なら十人中十人が引っ掛かりそうな甘い手口だが騙されて堪るか。
ダメも何もそんな趣味の悪い企画、いくらハルヒの奴でも



「いいわ、それ!面白そうじゃない。コスプレってのはね、似合う似合わないが全てじゃないのよ。
コスプレさせられてる子がどれだけ嫌がってるかっていうのが重要なのよね」

なんだ、そりゃ。

「さすが団長、よくお分かりですね。ではこちらは僕にお任せ下さい。
涼宮さんにはお二方をお願いしますね。こういうことは同性の方が何かと都合がいいでしょう」

どう、都合がいいんだよ。なんて突っ込んでやる気力は俺には残っておらず、
仕方なくだんまりを決め込む。
だいたい俺を含めてコスプレとやらを実際にやらされる側が
何も発言できない状態で事を進めるとは、これは立派な犯罪なんじゃないのか。

あぁ、面倒臭い。もう、お前ら二人で好きにしやがれ。

「そうはいきませんよ、これはあなたが主役のようなものなんですからね。
これから少しばかり、お付き合い願いますよ」














そう言う古泉に、俺は半ば引き擦られる形で文芸部室から連れ出されてしまった。
部室に残された朝比奈さんや長門にも、過酷な現実が待ち受けているのだろう。
何とか乗り切って下さい、今の俺に言えるのはそれだけです。



そして俺には俺の問題がしっかりと用意されているらしい。
さて、これからどこへ向かうのやら。

「僕の自宅ですよ。実は、こうなることを見越していくつか前もって僕個人で準備しておいたんです」

どういう思考回路を保持していれば、「こうなること」を「見越せる」んだ?
まさかお前、女装癖があるとでも言い出さんだろうな。
「それは万に一つも有り得ませんね、こういうものは
あなたのような方が袖を通して初めて意味を成すんですよ」

訳が分からん。

「解らなくて結構、僕の方で十分に理解しているのでね」

あっさりと言って退ける古泉に少々面食らいながらも、
その自信満々の態度にすっかりと騙されてしまいそうになる。
こいつには天性の詐欺師の才能があると俺は思うぜ。














そうこうしている内に、呆気ないほど容易に、古泉宅へと到着した。
考えてみればこいつの家に来るのはこれが初めてだ。
最悪な理由-reason-での訪問になっちまったが、
それでも古泉の部屋とやらには興味がなくもない。
できればもっと違う理由で訪問したかったもんだが、仕方ない。
適当に家捜しでもして、下手なことをされる前にとっとと退散しちまおう。





どうやら一人暮らしをしているらしい古泉の部屋は
高校生が暮らすには些か贅沢過ぎる構えをしたシンプルな1LDKだった。
普通、新社会人辺りでもせいぜいワンルーム止まりだと思うのだが、俺の認識は間違っているのかね。



「部屋も家具も全て機関から支給されているものなので、
詳しいことは僕にもよくは解りません。あなたにも気に入って頂けると嬉しいのですが」
気に入るも何も、これだけ立派な部屋なら誰も文句はないだろ。
気に入らないところがあるとすれば、この部屋の散らかりようくらいか。
そりゃ夜は例のバイトも入ったりで忙しいってのは分からんでもない。
だがそれにしたってこの有様はあんまりじゃないか。
この現実を目の当たりにして、何人の女子が幻滅するだろうな。



「お恥ずかしながらあまり自分のことには構えない性格でして、
あなたのためなら身を粉にして働き倒せる自信があるのですが、こればかりはどうにもね」

いかにも申し訳なさそうな口調で、さながらプロポーズのような
クソ恥ずかしい台詞を吐いて、古泉は恐らく寝室であろう隣の部屋へと姿を消した。





キッチンには一通りの調理器具やら食器やらがきれいに揃っている。
案外料理くらいはちゃんとやっているのかも知れんな。
なんてヤツを見直していたところへ古泉が大きな荷物を抱えて戻って来た。

これは、少しとは言わないんじゃないか?





「そんな、まだ序の口ですよ。僕としては北高女子制服を
一番に押したいのですが、これなんかどうですか?」

そうして古泉に手渡されたのは白い着物に赤い袴…………巫女か。

「おいおい正気か?これは朝比奈さんや長門のような
美少女が着るからこそ価値が上がるものであって俺が来ても……」



最後まで言い終わらない内に、飛びつくようにして抱き締められ、
何の前触れもなく制服のネクタイを引き抜かれた。

「ばっ……何しやがる」
「着付け方、ご存知ないでしょう。僕がお手伝いして差し上げますね」
反論をする隙すら与えられずにあっという間にシャツのボタンを外され、俺は慌てて古泉に背中を向けた。
多分どう足掻いても、こいつは俺がこの珍妙なコスチュームを
身に着けん限りはここから帰してくれないのだろう。





「分かった、分かったよ着ればいいんだろ。自分で着替えてくるからそれ見たらもう解放しろよ」

「それは、己の欲望を、という意味ですか?」
「俺を、ここから、だ!」














仕方なく隣の寝室へ移って、宣言通りに着替え始めてみたのだが、これが予想以上に難しい。
ハルヒはよくもこんなもんを着付けできたな。
それとも朝比奈さんや長門が自分で着付けたのだろうか。
今となっては知りようもないことだが、さてどうしたものか。

「あぁ、それと……」

見るなよ、と念を押して閉じた扉の隙間から古泉の声が入り込んでくる。
こいつには日本語が通じないのか。



「下着は着けないで下さいね。それが和装時のマナーですよ」



言うだけ言って、パタン、と静かに扉が閉ざされる。
正直、下着も着けずに服を着るなんて違和感ありまくりだったのだが、言う通りにしておかんと、
余計に時間を食いそうだったから、大人しく古泉の指示に従っておくことにした。
本当に何をやらせても面倒なヤツだ。
それにしてもやけに風通しのいい服だな。股間がやたらとスースーする。
これで合ってるのか?横の隙間から大事なところが見えちまいそうなんだが。














「ほら、着てやったぞ。何一つ面白いことなんか……」
ないぞ、と寝室の扉を開いて、リビングへと姿を見せた瞬間に、
「……っ!」
「う、わっ……!」



何故か俺は、古泉に思い切り、押し倒されていた。もう、訳が分からん。
痛い、とっとと離れやがれ。

「すごく似合ってます、想像以上だ。やっぱりあなたは何を着ても
扇情的になってしまうんですね。どうしよう、自分を抑え切れない」
ぜひとも抑え切って、寄りきってくれ。これは何というか、貞操の危機を感じるぞ。
頼むから、己の欲望だけは解き放たないでくれよ。





「あなたと……合体したい……」

寝言は寝て言えー!














やっぱり、そもそも、こんな格好をしちまったこと自体が大きな間違いだったってことに、
俺はもっと早く気付くべきだった訳で、古泉がこういう
意味不明で奇怪な行動を取ることは容易に予測ができた訳で、ええい首を撫でるな!

「ほら、鎖骨がこんなにくっきり……少し、痩せすぎじゃないですか?」
そう言いながら古泉は、奴が言うところのくっきりとした鎖骨とやらにちゅうちゅうと吸い付いている。
舌のザラザラとした感触や、時折触れる歯の鋭さに思わず体が震えてしまう。
そんな場所に性感帯を持ち合わせた覚えはないが、それだけで体温が
2、3度は上昇したんじゃないかと思えるほどに触れられた箇所が熱を帯び初めていた。
そんなところじゃなく、もっと直接的な…………
って、何を考えてるんだ俺は。

危うく熱に浮かされちまうところだったぜちくしょうめ。
こんなおふざけはとっとと終了しちまわないと、



「っあ……ッ」



不意に、薄布越しに乳首を抓られ、堪え切れずに引き吊った声が漏れた。
痛いくらいの刺激に、何故か触れられていないはずの下半身までもが反応を示した。
赤い袴の中央に小さな膨らみが出来上がり、その頂点にはほんの僅かな染みが出来上がっている。
だからノーパンは嫌だったんだ。いや、もはやそれどころの問題じゃない。

頼む、古泉。どうかこの事実に気付かないでくれ。
例え既に気付いていたとしても、ときにはスルーする力ってのも、大切だぜ。





「おや、少し触れただけなのに、もうこんな場所を硬くしちゃったんですか?」
しかし、と言うかやっぱりと言うか俺の心の叫びも虚しく、
目敏い古泉は俺の僅かな変化を簡単に見抜いて、
内股に出来上がった小さな山の頂点をツンと軽く弾いた。
刹那的な刺激に、俺の分身は縮み上がる。



ここまで来たらもう、とっとと直に触れて欲しいくらいだが、
それじゃ今までの古泉の行いを認めてしまうことになる。
俺がコスプレもといイメプレで興奮しちまったみたいで、何というか甚だ不本意だ。

「気付いてんなら早く解放しろ、このまま帰るわけにもいかんから、処理して来る」

他人様の家のトイレで、それも古泉の家で抜くってのは流石に抵抗があったが、
かと言って完勃ち状態でここから家まで帰る訳にもいかんからこれはやむを得ん。














「待って下さい!」
上に乗っかる古泉を振り払い、乱れた袴の裾を直してトイレへと立ち上がった瞬間に、
思い切り腕を引っ張られた。待って欲しいのはこっちだぜ。俺は今からトイレに……。
「僕というものがありながら、一人でオナニーなんて言語道断です。
優しくしますから、トイレじゃなくてベッドへ行きましょう、ね?」

何が「ね?」だ。

よくもまぁそんな恥ずかしい単語を堂々と。そもそも初めの出だし間違ってないか。
僕というものがありながら、なんてそれじゃカップルの痴話喧嘩みたいだぜ。



「……しのごの言わずに、あなたは大人しく僕に犯されてればいいんですよ」

言っている意味が分からん!



そう叫ぶ前に、俺はひょい、と古泉に持ち上げられ、
俗に言うお姫様だっことやらでベッドルームまで運び込まれた。
この優男のどこに、そんな腕力が隠されているんだ。
俺だってそうそう軽くは無いだろうにいとも簡単に横抱きにされた挙げ句に、
ベッドに下ろすときはそれこそふわりと柔らかく下ろされ、
俺が暫くその事実に気付けないほどだった。



「……巫女、みこ……ナース」
古泉は、おかしな呪文のような言葉を呟くと、唐突に袴へと手を掛け、
何の躊躇いもなくそいつを無理矢理に引き下ろした。
腰骨に一度引っ掛かり、少しそこが痛んだけれど、
そんなことを感じている暇もないほどに、手早く下着まで取り払われ、
下半身をしっかりと古泉の目の前へ晒してしまう羽目になった。



誰かこいつを止めてくれ。



「熟練の闘牛士であろうとも、今の僕をいなすことはできないでしょうね」

鼻息荒くそう言い放った古泉は、俺の股間に顔を埋めると、
じゅぷじゅぷと音を立てて熱を帯びて硬さを増した性器の先端をすっぽりと口に含んでしまった。
よくも同じ男のモノを口に含んだり出来るもんだ、
なんて感心していられたのも束の間、じゅる、じゅぷ、と先走りに濡れる亀頭を吸い上げる一方で、
根本は裏筋に爪を立てるようにして性急に扱き上げられていく。
薄い皮を時折引っ張るようにして痛みにも近い刺激を与えられ、
俺の分身はこれ以上ないほどにまで硬く膨れ上がっていた。
括れに舌が絡められ鈴口の縁へ歯が立てられ、一層ねっとりとした粘液が小さな口から溢れ出す。
膝の辺りまで引き下ろされた袴の縁にまで、太腿を伝い落ちた粘液が、しっとりとした染みを作り上げていた。

「も、いい加減……っ」
解放しやがれ。
それはつまり、古泉の口の中でイかせろ、ということを意味していて、
俺はこいつの舌遣いに、頂点まで追い上げられてしまったことを
認めなければならない状況に追い込まれていたけれど、
それでもそんなことに構っている余裕は、なかった。



「いいですよ、達っても」
「っあ!」
低く、優しい声に最後の鍵を取り壊された気分だった。
今まで必死に我慢し続けていたその行為を、たった一言で解放されてしまう快感。
俺は、ドクン、と脈打つ性器の先から白濁を吐き出したのと同時に、意識を手放してしまった。














それから、どれくらいの時間が経ったかは分からない。
ただひとつ分かるのは、古泉の手で達してしまったこと、そして多分ここは、
「目が覚めましたか?」
意識を手放す直前まで体を預けていた古泉のベッドの上、もとい腕の中だった。
さっきと違うことと言えば、古泉が隣で寝転がっていること。そして、



そして……



「何故……俺は今、白衣を身に纏っているんだ?」
それも、理科やら保健やらの先生が着ているそれではなく、
いわゆるナースが着るワンピース型の体のラインにぴったりと添った
こんな服を着るときが来ようとは、誰がこんな事態を予測出来たろう。

「とても良く、似合っていますよ」
この場合のその台詞は褒め言葉でも何でもない。込み上げてくるのは屈辱、の二文字だけだ。
「こんな服は、早く脱がせろ!」
「おやおや、あなたからそんな直接的なお誘いが頂けるとは
思ってもみませんでした、ではさっそくお言葉に甘えて……」

こいつの耳には自分に都合良く音声を変換する機械が備わっているらしい。
今のはどう考えたってそういう意味じゃないだろう。



「すみません。僕には、それより他に考えようがありませんでした」
すっ、と掌が太腿を滑り、短めのスカートの裾から古泉の腕が侵入して来る。
滑らかなカーブを描く尻朶の辺りを撫で付けられるまで少しも気が付かなかったけれど、
俺、今、ノーパソ……じゃなくて、ノーパンじゃないか!





「今頃それに気付くとは、些か不用心ですね。ですが、もう遅いですよ。
こちらはすっかり、準備万端なんですからね」
何が準備万端なのかと聞き返す隙すら与えられずに、
丘のような肌の上をするりと滑り抜け、硬く閉ざされた後孔にツプッと指先が突き立てられた。
「ひぅっ……」
突然のことに、思わず声が上がる。若干の違和感は感じたけれど、
それ以上の不快感が襲いかかることはなく、潤滑剤を纏っているらしい
古泉の指先は迫る肉壁を押し広げるように動かしながら、
あっと言う間にすっぽりと指の付け根までをその孔の奥にまで収めてしまった。
内側が擦れる感触と、ぐちゅぐちゅと響く淫猥な水音に、
落ち着きを取り戻していたはずの分身が、再び頭をもたげはじめた。
後ろへ捻り込まれた指が、いつの間にか二本、三本と増えている。



「っあ!」



と、挿入された指が三本に増え、相変わらずの調子で中をくじかれていた折に、
不意に指先のひとつが、奥深い場所に眠るしこりのような箇所を掠め、
突然走った強烈な快感に俺は思わず声を上げていた。
俺の反応に気付いたらしい古泉は、ニヤリと嫌な笑みをひとつ零して
俺が声を上げた箇所を探り当て、そこばかりを集中的に責め立て始めた。

声が、出る。














頭の中が弾けて、真っ白になってしまいそうなほどの、凄まじい快感だった。
このままこいつの腕の中で溺れたいと願ってしまうほどに込み上げる快感。
触れられていないはずのペニスは完全に勃ち上がり腹の上に小さな水溜まりを作り上げている。
こんな中途半端な状態は嫌だ。もっと強い刺激が欲しい。指なんかじゃなくて、もっと別の……。



俺は、何を考えてるんだ?

「ごく自然なことですよ、どうすれば良いか……もうご自分でもお気付きでしょう?」
そういう方面の知識が全くないと言ったら嘘になる。俺も健全な男子高校生なんでね。
だが、しかし、古泉の行動から察するに、ヤツは俺のそんな場所を使おうとしているのか?
そこは外に向かう一方通行のはずなんだが。



「ですが、ついさっきあなたも体感されたはずですよ。
男性が最もエクスタシーを感じるのはペニスの挿入によってではなく……」
もういい、分かったから!そういう類の単語は耳に毒なんだよ。
「おやおや、あなたも意外と初心なんですねぇ」



いや、そんなつもりもないんだが。俺だって谷口やなんかとは
下ネタで盛り上がることもある。さっきも言ったが俺は健全な男子高校生なんでね。
でも、それが古泉の手に掛かると一気に状況が変わって来る。
古泉の口から紡がれる単語がただひとえに恥ずかしい。

「僕を意識して下さっている、ということでしょうか」

うるさい!

「ふふ、どうやら図星のようですね」
そうして戯れ言を紡ぎながらも、古泉は指の動きを止めることはなく、
そうしてすっかりと慣らされた後孔は、指を引き抜かれた後にもヒクヒクと名残惜しげに痙攣を繰り返した。

「キョン君、」

不意に、直接鼓膜を震わせるようにして耳元へ囁き掛けられたかと思うと、
今度は唐突に硬く勃ち上がった性器を撫で付けられ、
「ゆっくり息を吐いて……」
言われるままに従ってみる。
その、次の瞬間に僅かに緩まった孔が、いつの間にか取り出されていた
古泉の性器に突き上げられ、ギチギチと悲鳴を上げながらその中頃辺りまでを
すっぽりと飲み込んでしまっていた。
捲り上げられた白衣の裾から、俺の勃起した性器越しに結合部分がぼんやりと窺える。
俺のよりも少し大振りに見えるそれを、俺の尻がくわえ込むその光景はなかなかに倒錯的だった。



「動き、ますよ……」
キツい、これはちょっと痛いかもしれん。
裂けてしまうんじゃないかと不安になるくらいに、
めいいっぱいに縁を広げられて息が詰まりそうだったが、それは古泉も同じであるらしく、
片目を伏せて苦しげに息を吐くと、せっかく挿入した性器をギリギリのところまでズルズルと引き抜いた。
その行為に、再び反応を示すように、秘部の縁がキュッと締まり、
古泉の性器を括れの辺りで強く締め付ける。
まるで、出て行くなと懇願するようなその反応に、俺は目眩を覚えた。



「身体は正直、ということですよ」
クスッと笑みを零した古泉は、ギリギリのところまで引いた腰を、
今度は何の前触れもなく一気に打ち付け、その瞬間、最奥のしこりを
グイッと押し上げられ俺の目の前は真っ白にスパークした。

「っあァ!」

「ここが気持ち良いんですね?」

半ば悲鳴にも似た声を上げた俺に、古泉は満足気に微笑み、
それからは何の躊躇いもなく一気に中を穿ち始めた。
腰を打たれる度に敏感な箇所を掠められ腹の間で性器を何度も擦り上げられ、
俺の分身は限界にまで上り詰めていた。

「っ……う、古泉……ッ、もう」
「達かせて下さい、でしょう?」
「は、ぁ?」
激しく腰を揺らしながら、腹の間へ掌を滑り込ませた古泉は、
突然俺の陰茎の根本へ指を掛けると引きちぎらん勢いでそれを強く握り締めた。
「ほら、ちゃんと声に出して伝えて下さらないと、いつまで経ってもこのままですよ」
この、意地の悪い挑発に乗るのは、甚だ不本意だったが、
そんな悠長なことを言っていられる余裕が、俺には残されていなかった。
ぐるぐると渦巻く欲望を解放して欲しい。今の俺が考えられるのはそれだけだった。



「……かせろ」
「聞こえませんねぇ」
「イかせて下さい、一樹せんせぇっ」
「っ!」
ナースときたら、ドクターだろ。
俺の考えは、あながち外れていなかったらしく、俺の発した言葉に反応を示した古泉は、
しっかりと握り締めていた性器から指先を離し、
奥に捻り込まれていた亀頭の割れ目からドクン、と熱い粘液を吐き出した。
その瞬間に、俺の性器からも白濁が飛沫になって腹と腹の間に飛び散った。
「は、あ……はぁっ」



絶頂を迎えた後の倦怠感は、どこか心地良かった。














「ふぅん、なかなかやるじゃない。コッチが巫女でコッチがナースね。
翌日の文芸部室。
朝比奈さんと長門に着せる衣装を取り決めたらしいハルヒに、
数枚の写真が手渡された。
俺が変態になっておかしな格好をしている写真……あの野郎、何時の間に撮りやがったんだ!



それにしても俺、意外といい感じに写っているじゃないか。
なーんて、俺が女装に目覚めることは金輪際ないと誓うぜ。
金輪際、だ!














エンド